土壁の住み心地 #2 |
室内環境と土壁, 科学的に見る伝統構法 |
土壁の住み心地 #1からの続き
土壁は、熱容量が非常に大きい為、室内温度の変化が小さく、体への負担が少ないことの他にも、調湿機能は特筆すべき能力を持っています。実験の結果からわかることは、他の建材では湿度を吸収する能力はあっても、吐き出す能力が劣っているため、湿度の上げ下げについていけず、建材内部の水分量が、徐々に増えていってしまうのに対し、土壁は吸った量とほぼ同じ量を吐くことができるため、壁体内の水分量を常に、一定に保つことができるということです。
部屋の室内環境の評価の指標として、もう一つ人間にとって大事なものがあります。それは、「ぬくもり」という視覚から感じるものです。
水色や、コンクリートの壁は、冷たく感じ、オレンジ色や、布地には暖かみを感じます。
京都では、荒壁仕舞い(あらかべじまい)という言葉が使われ、それは、仕上げ塗りの手前で工事をおしまいにする。仕上げは、その家の娘さんが、嫁ぐころにしよう。(ようするに十年後)そのくらい家づくりを長いスパンで考える風土があるということです。
荒壁仕舞いの土壁は、とてもぬくもりを感じます。
京都は、長野県と同じ、内陸性気候であり、寒暖の差が激しいところです。
断熱材の無い土壁のみの町屋に住む方の言葉です。
「本当に暑くて大変なのは、夏場の一週間だけです。あとはクーラーも何も入りません。ですからその時期は、風通しをよくしたりしてしのぎます。冬場も本当に寒いのは、一週間だけです。あとはファンヒーターで過ごしてます。
寒い時は、うちの中に井戸があるので、井戸のふたをあけて、部屋の湿度をあげたり、玄関に打ち水をして、うちの中の湿度をあげる工夫をして過ごします。井戸水は、水温が、年間を通して15度で一定ですからね。あとはとても快適です。ですからそのたった一週間のためだけに、家じゅうを断熱材で覆うなんていうのは、私はイヤです。」
本当の心地良さを知っているから、欲を言わない。完璧さや、最高を求めず、その一歩手前で止め、知恵と工夫で、建物と人が共生する。この建物の住み手にふさわしい、素敵な人だなあと感じ、このお話しをお聞きして、久しぶりにとても清しい気持ちになれました。
関連ホームページ
「土壁・漆喰」