確信を持った日 |
伝統構法と耐震性能, 伝統構法について, 実験・理論 |
実験二日目。
昨日までと違って、気持ちに余裕を持って見る事ができます。
1/150rad、1/50rad、見ていて圧倒的な安心感があります。
1/50radを超えて、ラストの最大変位までの領域に入りました。
あと少しでゴールという時、「ガクッ」と音がして、計測値がクンと下がりました。
柱のホゾがやられたようです。しかし、耐力は、その瞬間低下しただけで、再び上昇を始めました。さらに加力すると、もう一度計測値が、クンと下がりました。しかし、また、再び耐力が上昇していきます。一部が、破損しても、全体で粘る。これが伝統構法の底力です。
結局、最後の最大変位まで持ちこたえてしまいました。
試験終了後、早速、試験体をひっくり返しホゾの状態をみます。
やっぱり割れていました。これに対処するには、単にホゾの長さをあと少し長く作ればいいだけです。
でも、一歩考えを深めると、その改良は、必ずしも必要ではないと考えることができます。
理由は、二つ。現に今回の作りで、十分な結果が出ているということ。
それともう一つの理由は、木は自然のものですから、割れ方は木の繊維に沿って斜めに割れたり、微妙な曲線を描きます。
ですから、ホゾに直交する込み栓の辺に沿って真っ直ぐには、絶対に割れません。必ず引っ掛かりがおきます。わずかな引っ掛かりがおきるだけで、木にはめり込みが生じ、耐力を維持することが出来ます。
実験を通し、この壁は究極の状況で、人の命を護る壁として信頼できる。
そのことが確信できた日となりました。
その日の深夜。実験をしてくれた試験場の方から速報として、実験データがメールで送られてきました。こんな時間まで一生懸命協力して頂き、本当に感謝です。
壁倍率1.7倍。
当初の目標1.5倍をクリアしました。
尊敬する法隆寺最後の宮大工、西岡棟梁の言葉を思い出します。
「我々は達人ではないけれども、達人の伝統をふまえてやっているのだから間違いないんや。」
了。