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安曇野の家『奨励賞』受賞 

安曇野の家が、NPO法人「伝統木構造の会」創立十周年記念 伝木賞 コンクールにおいて『奨励賞』を受賞しました。

施主さま始め、関係者の皆様に心より深く感謝申し上げます。


伝統木構造の会ホームページより募集要項の抜粋
1.目的
今年の総会で創立十周年を迎えこととなり、その記念事業として「伝木賞」を創設いたしました。大工、設計者、そして地域で活動をされている会員・グループ、ことに 将来性のある若手の皆様から応募をいただき、「伝木賞」を授与することとなりました。この賞は本会設立以来、会員が取り組まれた伝統木造の仕事や伝統木構造の普及啓蒙等の活動を行った成果をエントリーしていただき、顕彰することでさらなる伝統木構造の普及・発展に寄与することを目的とします。
2.募集の範囲
当会発足から昨年末まで(平成16年4月10日~平成25年12月31日)に竣工したもの、又は成果を納めたもの。個人・伝木会員を含むグループによって建築作品や業績を部門毎に募集する。
イ)作品部門
  ① 住宅<新築・増改築等>
  ② その他建築<新築・増改築等>
ロ)業績部門
  ① 技術開発・調査研究(継手仕口や構法提案等も含む)
  ② 普及啓蒙活動(技術指導等も含む)
  ③ 支援・ボランティア活動


安曇野の家 プレゼンボード
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当日は全国から、小川三夫棟梁、海老崎粂次棟梁といった日本の名工と謳われる方たちや、会長である増田一真先生はじめ、降幡先生や倉橋先生など、目を移せば、そうそうたるメンバーが飛び込んでくる状況で、そうした皆様方の前での発表は、ひざが震え、まともに前を見て話すことができませんでした。

全応募作品22作品より、伝木賞1作品 準伝木賞2作品 奨励賞4作品が選出されました。

奨励賞の時に自分の名前が読み上げられた時は、まさか呼ばれるとは思っていなかったので、他人事のように聞いていました。本当にびっくりしましたが、仕事において、こういった評価を頂けるのはとてもうれしいです。

奨励賞を頂いたプレゼンボード ①がそれです。


関係者の皆様にこの場より、深く御礼申し上げます。


安曇野の家

伝統木構造の会 facebook
伝統木構造の会のホームページ

安曇野の家が記事になりました

安曇野の家は、石場建て、土壁の家ということで、工事中は、テレビ東京さまを皮切りに、TBSさまなど様々なメディアから取材のお問合せを頂きました。しかしながら、テレビ局の取材日と現場の進行状況がうまくあわなくて、申し訳なかったわけですが、この度、新建新聞社さまから取材がきました。

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津波にも、地震にも耐えた民家

東日本大震災。マグニチュード9.0。
いくら伝統構法とはいえ、地震に耐えることは出来ても、津波にはどうすることもできないと、自分自身、そう思いこんでいました。
しかし、土壁で出来た古民家は津波に流されることなく、立派に残っていると耳にしました。それも一件や、二件といった数ではなくです。
岩手県陸前高田市には、そうした古民家がいくつもあることを知り、この目で確認する事にしました。

津波にも耐える家の理屈は、こうです。
今の家の外壁は、基準法や、保険の関係上、防水性能は、絶対満たさなければなりません。こうした家は、水の抵抗を外壁面全てが受けることになります。
これに対し、土壁は、水を吸収し、泥となって流れて行くために水圧を逃がすことが出来ます。
例えるなら、金魚すくいの構造と一緒で、紙が水を吸収して破れてくれるために骨組みが残るという仕組みです。

(伝統木構造の会秋山先生撮影)
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岩手県のこの地方は、古くから気仙大工と言われる大工の伝統文化があり、全て、平屋の入母屋造りです。

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現代の基準法による家は、水圧をまともに受けて、一件足りとも残らず流される中、気仙大工の作った古民家は、地震にも耐え、津波にも流されず、そんな民家が幾つも幾つも当たり前のように残っていました。長野の栄村で見た光景と全く同じ結果(築300年の古民家が残り、築三年や、半年の家が主要な柱の損壊)がそこにありました。

気仙大工の造る伝統建築は、小屋組において小屋束を用いず、梁の組み合わせのみで組みあげる合掌構造が特徴です。入母屋造りを出し桁で組む木組みは、本当にすばらしいの一言です。

(実際に残っている民家)
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確信を持った日

実験二日目。

三つ目の試験体の実験が、始まりました。
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昨日までと違って、気持ちに余裕を持って見る事ができます。
1/150rad、1/50rad、見ていて圧倒的な安心感があります。

1/50radを超えて、ラストの最大変位までの領域に入りました。
あと少しでゴールという時、「ガクッ」と音がして、計測値がクンと下がりました。
柱のホゾがやられたようです。しかし、耐力は、その瞬間低下しただけで、再び上昇を始めました。さらに加力すると、もう一度計測値が、クンと下がりました。しかし、また、再び耐力が上昇していきます。一部が、破損しても、全体で粘る。これが伝統構法の底力です。

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結局、最後の最大変位まで持ちこたえてしまいました。

実験終了直後。
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試験終了後、早速、試験体をひっくり返しホゾの状態をみます。
やっぱり割れていました。これに対処するには、単にホゾの長さをあと少し長く作ればいいだけです。

でも、一歩考えを深めると、その改良は、必ずしも必要ではないと考えることができます。
理由は、二つ。現に今回の作りで、十分な結果が出ているということ。
それともう一つの理由は、木は自然のものですから、割れ方は木の繊維に沿って斜めに割れたり、微妙な曲線を描きます。
ですから、ホゾに直交する込み栓の辺に沿って真っ直ぐには、絶対に割れません。必ず引っ掛かりがおきます。わずかな引っ掛かりがおきるだけで、木にはめり込みが生じ、耐力を維持することが出来ます。

実験を通し、この壁は究極の状況で、人の命を護る壁として信頼できる。
そのことが確信できた日となりました。

その日の深夜。実験をしてくれた試験場の方から速報として、実験データがメールで送られてきました。こんな時間まで一生懸命協力して頂き、本当に感謝です。

そして、先日この試験の報告書が届きました。
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壁倍率1.7倍。

当初の目標1.5倍をクリアしました。

尊敬する法隆寺最後の宮大工、西岡棟梁の言葉を思い出します。

「我々は達人ではないけれども、達人の伝統をふまえてやっているのだから間違いないんや。」


了。


一日目終了

1つ目の試験体の結果に、その場に立ち会った人たちは皆、驚きと、感動で興奮しながら、結局は、昔の人ってすげーんだな。ということ以外の言葉が見つかりませんでした。

変形しきった土壁を元に戻す過程においてですら、土壁は耐力を示し、役目を終えてもなお、頑なにがんばり続けている姿に私は、チョット感動しました。

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私たちは、何ひとつ新しい事や、工夫を加えていません。


2つ目の試験体も同様の結果が出ました。
一日目の実験は、ここで終了となりました。

つづく。