津波にも、地震にも耐えた民家 |
伝統構法について, 文化価値としての建築 |
東日本大震災。マグニチュード9.0。
いくら伝統構法とはいえ、地震に耐えることは出来ても、津波にはどうすることもできないと、自分自身、そう思いこんでいました。
しかし、土壁で出来た古民家は津波に流されることなく、立派に残っていると耳にしました。それも一件や、二件といった数ではなくです。
岩手県陸前高田市には、そうした古民家がいくつもあることを知り、この目で確認する事にしました。
津波にも耐える家の理屈は、こうです。
今の家の外壁は、基準法や、保険の関係上、防水性能は、絶対満たさなければなりません。こうした家は、水の抵抗を外壁面全てが受けることになります。
これに対し、土壁は、水を吸収し、泥となって流れて行くために水圧を逃がすことが出来ます。
例えるなら、金魚すくいの構造と一緒で、紙が水を吸収して破れてくれるために骨組みが残るという仕組みです。
岩手県のこの地方は、古くから気仙大工と言われる大工の伝統文化があり、全て、平屋の入母屋造りです。
現代の基準法による家は、水圧をまともに受けて、一件足りとも残らず流される中、気仙大工の作った古民家は、地震にも耐え、津波にも流されず、そんな民家が幾つも幾つも当たり前のように残っていました。長野の栄村で見た光景と全く同じ結果(築300年の古民家が残り、築三年や、半年の家が主要な柱の損壊)がそこにありました。
気仙大工の造る伝統建築は、小屋組において小屋束を用いず、梁の組み合わせのみで組みあげる合掌構造が特徴です。入母屋造りを出し桁で組む木組みは、本当にすばらしいの一言です。