松代
離れ山神社境内改修

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神社の改修工事をする事になりました。

竣工

鳥居をくぐり、階段を登り、ようやく境内に着いた時には、息が上がっています。

状況は、柱がまたしてもコンクリートの上に置かれていました。

コンクリートはその性質上、水分を保持し続けます。
そこに木を建てれば、木の根元がどういう状況になるか。

コンクリートの耐用年数が数十年なのに対して、石は耐用年数が数千年単位ですから建物の基礎としてこれほど長期にわたり安心できる素材はありません。

構造は、比較的、キチンと作られてあったのですが、土台と柱の接合部が栓で留めてあり、小口から長い期間を通して雨水によって侵食されていました。

神社を管理している区の方達から、手すりも今より高くして欲しいといった要望等をお聞きして、図面を書き、工事の準備に取り掛かります。

柱は樹齢80年以上の国有林から切り出した木曽ひのきです。
数ヶ月かけて天然乾燥させました。
木目が緻密で、木肌も美しく、滅多に見る事のない素晴らしい木です。

土台と柱の接合部は、鼻栓をやめて、雇いで繋ぐ事にしました。
この方が構造耐力も向上し、耐用年数も伸びます。
雇いに使う部材は、戸隠山から数年前に切り出し、天然乾燥させた栗の木を使います。
栗は腐れに非常に強い木です。


こうした素晴らしい素材に囲まれて仕事が出来る事は、作り手として、とても幸せな事です。

足場が組まれ、既存の回廊の解体が終了し、材木の搬入です。

人力で運びます。柱は一本役30kgあり、それが7本。
この階段を7往復。その他、通し貫、床板、最後は礎石。
大変な重労働です。

工事の手順は、先のお寺の総門の改修と同じく、礎石を置きそこに柱を乗せ、通し貫を通して組んでいきます。

伝統構法が、なぜ『工』ではなく『構』という字を使うのか。

それは、木組みの架構形態を重んじ、そこに日本建築伝統の技術を受け継ぐ意志を表明する意味がこめられているからです。だから『工法』ではなく『構法』なのです。

伝統構法は、力学的に合理的であるだけでなく、組みあがった構造体に美がともないます。

これが、一般在来のプレカットで組んだ建物と決定的に異なる点です。

金物に頼らない為、100年単位の長期に渡る耐用年数を保持することが可能となります。

各工程

この離れ山神社は、かつて千曲川が氾濫したさい、地元の住民たちがこの神社に逃げて護られた逸話があります。

 

地元の方たちの積み立てた費用で工事をさせて頂くわけですから、私どもとしては、地元の方たちの誇りに思える回廊にして、この先ずっと大切にして頂けることを願って作らせて頂きました。

 

地鎮祭では、普段入ることの出来ない内部で神主さんのお祓いを受けたときは、身の引き締まる思いでした。

 

大変な工事でしたが、工事が完了した時は、紅葉がとても美しく、無事に満足のいく回廊が完成しました。
関係者皆さまにこの場を借りて、深く御礼申し上げます。 ありがとうございました。