親の建てた家で、子が育ち、その子が成長すると、また別の土地で家を建てる。その事を否定するつもりはありません。
しかし、そのため、築後20年、30年持てば良いという考え方をしている限り、ひとは、未来永劫、住宅ローンに縛られることになります。
日本の家づくりは、工業製品を使わず、自然の恵みを頂くことで、お金を必要とせず、構造においては、金物も用いないため、移築も可能で、200年、300年と住み続けられる性能を、本来持っています。
私どもが、声を大にして言いたいのは、もっと先祖と深く繋がり、子孫と繋がろうと思ってもらいたいということです。
長く住み続けることにより、木はひとに語りかけてくるようになります。
豊かな暮らしの意味を、伝統構法を通じて、一度、考えてみませんか。
伝統構法が教えてくれる、日本本来の豊かな暮らし
「昔の人たちは、どんな気持ちで家を建てていたんだろう?」、「どのような暮らしを営んでいたんだろう?」、ふと、伝統構法に携わっていると、昔の人の暮らしを改めて見つめ直すシーンに、何度か出くわす事があります。
住み継いでいく。これは、現代ではあまり想像できません。
人々のライフスタイル、価値観が変わったということもありますが、おそらく、現在の一般的な家づくりでは、50年すら住み続けることはできないでしょう。
私たちはこれまで、お施主さんと、家を建てる苦労を、共にしてきました。だからこそ、思うのですが、世代交代の度に、新しい家を建て直し、その度にローンを支払い続けていく。
このサイクルの繰り返しは、やっぱりおかしい。
私たちには、私たちに合った本来のライフスタイル、取り戻すべき暮らしがあるのではないかと、伝統構法に関わる中で、強く感じるようになりました。
100年、200年と住み継いでいく中で、ある日、柱に刻まれた、ひとつの傷を通して、先祖との対話ができる家。
「この傷は、昔、おじいちゃんのおじいちゃんが、子供のときにつけた傷なんだって」「へ〜。どんな人だったの?」
想い出や、その家の歴史を通じ、会ったこともない先祖と会話ができる。
長く住んでこそ感じる「幸せ」も、かけがえのない体験なのだと、伝統構法に関わることで、私たち自身も、改めて、そう感じるようになりました。