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小坂建設について

耐震の在り方はひとつじゃない。その1〜建築思想を選ぶ時代〜

先日、落とし込み板壁による石場建ての家の確認審査が無事に通り、書類の受け取りに行きました。
限界耐力計算という、あまり例のない物件の審査だったわけで、書類の受け取りの際に色々な話をさせて頂きました。
私も説明はあまり上手い方ではないので、今度また説明を求められた時のためにここに記しておこうと思います。

現代の一般住宅の家づくりは、構造用合板や筋交いを用いて、とにかく建物を固くつくることによって、強度を上げていきます。
こうした家づくりの場合は、屋根は軽い方が良く、板金の屋根の方が瓦屋根より有利です。
このつくりを限界耐力計算にかけるとどうなるか。

まず、耐力係数がかなり高い数値になります。それはどういうことかというと、建物が基礎に緊結されてない場合、建物が強風時にふっとばされることを意味します。
屋根が軽く、建物が固い為、こうなることは、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
これを建物の質量と剛性の関係に言い換えると、現代の住宅は「質量は軽く、剛性はより強く」が特色です。
軽くて固い。だから吹っ飛ばされないようにアンカー、ホールダウン金物でしっかりと基礎に固定する必要があるのです。

ホールダウン金物.jpg
金物は命綱

一方、伝統構法の家ですが、現代の家づくりにならって剛性をどんどん高めていくと、やはり耐力係数が高い数値になります。
伝統構法の場合は高め過ぎた剛性を逆に弱める修正を行います。

なぜそのような修正をするのかといいますと、礎石の上に載せた柱(又は敷土台)は、石と木の摩擦力によって静止しています。
前述の耐力係数の値が、摩擦力の値を超えてしまうと、建物はやはり吹っ飛ばされてしまいます。
しかしここでアンカーで固定するのではなく、剛性を高めすぎるつくりはかえって危険であるという判断をします。ここが現代の家づくりの発想と決定的に違う点です。

剛性を弱め、代わりに建物の変形性能を高めていきます。
剛性は程々におさえ、変形性能を高める。
伝統構法の家は「質量と剛性のバランスをとる」のが特色です。

大きな地震が来た場合、現代の家づくりはあくまでも剛性で対抗するしかありません。
建物の剛性が外力に対して限界を超えたとき、言い換えると想定外の地震がきたときには、建物は一瞬でぺしゃんこになります。

これに対し伝統構法の家づくりは、建物剛性の限界をあらかじめ決め、それ以上の揺れ(想定外の外力)に対しては、浮いたり、ずれたりして地震エネルギーから逃げます。
つまりは、想定外の地震の存在も想定内ということです。柔よく剛を制す。
これが自然を恐れ敬い、受け入れ、一体となる日本人の自然観に基づく建築思想です。

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