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小坂建設について

耐震の在り方はひとつじゃない。その2〜その一言は全てを語る〜

先週のブログにおいて誤解を生じない様、念の為申し添えておきますが、現代の剛性に頼る家づくりを否定している訳ではありません。
家を建てる際の価値基準は、人それぞれだと思います。温熱、デザイン、意匠など。
そうであれば、建築思想も決して疎かにはできない価値基準としてあるのではないでしょうか。という提案です。

私は、これまでに東日本大震災、白馬村の地震の被害状況を見てきました。
現代の耐震化された家も古民家も公平に被害状況を見てきたつもりです。
東日本大震災でも数々の古民家が普通に建ち続けている様子を現地で確認しました。
長野県栄村(震度6強)でも、道路は崩落し、家々は傾き、言葉を失う光景が広がっていました。
築100年ほどの古民家もずいぶん大きな被害を受けていました。その一棟々の被害状況を調べていきました。
そうしてわかった事は、ほとんどの家がブロックの壁の浴室を設けてあり、その部分と木造の部分が引き裂かれるようにして壊れていました。
新築の家の被害状況は、危険な状態で傾いていて、恐る恐る中を観察すると柱脚のホールダウン金物は、そのままの位置で柱を引き裂き、筋違いは座屈して折れて壁を突き破った状態でした。

古民家の被害の直接的な原因は、建物の一部をブロックに作り替えた為に、動きたい木造部分と動かないブロック壁との相反する挙動が原因です。
新築の家の被害の原因は、ひとえに建物の剛性を超える想定外の大きな地震力に襲われた為です。

そんな状況の中、築300年の茅葺きの古民家がほぼ無傷で建っていました。
土壁に、おそらく地震波を受け止めたと思われる小さなひび割れを確認しただけです。

建物が築300年にもかかわらず地震に持ちこたえた理由は、建物の質量と剛性のバランスがきちんととれ、なおかつ建物全体が一体となって地震時のエネルギーから逃げた結果に他なりません。
このいざという時、逃げることができるのがポイントです。伝統構法は耐震構造ではなく、免振構造と言えます。それを木の組み方で成立させているのが先人の知恵のすごさです。
そして、その木組みの原点が、先週のブログで述べさせて頂いた自然観に基づく建築思想です。この建物は残るべくして残ったと言えます。

そこに住むご家族は、大勢の村民が避難所での暮らしを余儀なくされる中、家でこたつにあたってテレビを見ていました。
視察に行った私たちが挨拶をすると、その家の奥さんが一言

「うちは地震だいじょうぶだから。」

そのたった一言は、とてつもない力強さと重みをもって、私の記憶に残りました。

法隆寺.jpg
法隆寺

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