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茅野市 M様邸 「石場建て」と「限界耐力計算」
法隆寺は、現存する世界最古の木造建築としてあまりにも有名です。
ひとつの石の上に心柱がのっかっているだけの建築が飛鳥時代から現代に至るまで1300年を超えて建ち続けています。
石の中心ではなく、石の重心に柱の芯を乗せて建てただけの建築。
この構法にのっとった造りを石場建てと呼びます。
7年に一度、長野県諏訪地方に古来より伝わる「御柱祭」。
人々の暮らしが神様と常に共にあるこの地に、これからご紹介するM様邸の家(伝統構法・石場建て)が建築されました。
この家造りは、通常の確認審査はなぜか通りません。
現行の建築基準法の仕様規定から外れるためです。
別途構造計算を行い、専門の審査機関を通過しなければ建築許可がおりません。
世界に誇れる木造建築をお手本とする造りが、自国の建築基準法に拒絶されるというおかしな話です。
限界耐力計算とは伝統構法特有の柔構造(変形性能)を評価できる計算方法で、振動論がベースになっています。
なかなかイメージを伝えるのが難しいのですが、例えばコンクリートの壁を思い切り押してもびくともしません。
これは押す力とコンクリートが押し返す力がイコールとなっているうちは大丈夫ですが、コンクリートの耐力を超えるといっきにボキっと壊れます。
これに対して、暖簾(のれん)を押すと押したぶん暖簾は後ろにしなり、いくら押しても押し切った力以上の力で暖簾を押す事は出来ません。力が逃げていってしまうからです。
コンクリートが剛構造で、暖簾が柔構造となります。
限界耐力計算とは、暖簾を押し切った状態での暖簾の変形状態、および暖簾の変形性能を調べるようなイメージです。
簡単なイメージを紹介しましたが、このイメージだけでもコンクリート造りの内部にいるより暖簾造りの内部の方が安全性が高いと感じませんか。
私達の先人は建築に暖簾造りを選び、そしてできたのが法隆寺です。
そして今もなお建ち続ける古民家の木組はこの暖簾造りを素朴に受け継いだものです。