本の紹介

現場から伝いたい事

2025.05.27


 

「伝統民家の生態学」 花岡利昌 著

 

南北に長い私たちの国において、各地域ごとにそれぞれの暮らしの中から育ってきた家の造り方を学ぶことは、とても大事だと私は思います。

 

本書において、実際に現地に赴き、民家の造りの特徴を調べ、測定器具を用いて、住環境を詳細に分析し、その実態を考察していくことによって、先人たちの知恵、工夫を学ぶことができます。大変な時間と労力を根気強くかけてできた貴重な本です。

 

人間の体感温度というものは、一日を通して室温が一定でかつ、周壁の表面温度も一定であれば、室温が低くても人は寒さを感じることなく過ごすことができます。

 

だから土壁や板倉がいいんです。

 

年々古民家が姿を消していく時代の流れにあって、その地方、地方の風土に適した造り方について学ぶ機会を持つこともなく、ただ気密、断熱のみのものさししか持っていない現代の私たちの家づくりは多様性を失い、貧相に思えてきます。

 

本書を通して、合掌造りの棟の向きが南北に向けられている理由、「土座」の暖かさ、「分棟民家」、「高倉」、「竹床」など自然環境と人の知恵とが調和した住まいの文化の豊かさを知ることができます。

 

本所より抜粋

合掌造りの屋根がいかに夏の日射量を抑え、冬の日射量を受けているかがわかるグラフ。

夏涼しく、冬あたたかい造りは高価な断熱材に頼る前に、先人の知恵から学び、現代に生かすことに注力すべき。