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篠ノ井T様邸
私: 建物の骨組みですが、プレカットと手刻み、又は伝統構法のどちらになさいます?ご予算では、伝統も可能だと思いますが・・・。
施主さま: プレカットは一般的に過ぎるし、かと言って伝統構法だと躯体に予算の割合がかかり過ぎてしまう。
太陽光や床暖もやりたいし・・・。どちらかというとわたしたちは自分の家のイメージは、外観も含めてこのように考えていますので・・・。
ご要望、こだわりをよくお聞きし、幾度かの打ち合わせの後、手刻みで進めることになりました。
手刻みによる加工と、プレカットによる加工の一番の違いは、梁と梁の継手、柱と梁、土台と柱の仕口の強度です。
また、せっかく仕事をやらせて頂くので、伝統構法の足固め、差し鴨居など、随所に取り入れて、つくることにしました。
このことはお客様には、ナイショで進めていました。結局建て方のあとでお話しました。お施主さまから与えられた条件の中で自分たちのこだわりを生かすのが、小坂建設のやり方です。棟梁以下現場の職人さんたちは、私の父の代から、こうした方がもっとよくなると思えば黙ってやります。誰にも押し付けがあってはいけない。
躯体の設計を何度も書き直し、そのつど棟梁と打ち合わせします。
棟梁も大変だったと思います。図板を何度も書き直してくれました。
ようやく納得のいく伏図ができ、加工に入りました。
差し鴨居は、材木屋さんに赤松をお願いし、大黒柱はヒノキの7寸角にしました。この大黒柱は、伝統構法の技法をとりいれ、石場建てとします。柱の下の石には御影石を使います。土間コンクリートに直接建てますので、小口から水分を吸わないようにするためです。また、土台と基礎の間にも御影石をかませました。
私: 内装をどのようにしましょうか?
安価でスピードがあるのは、耐火ボード+クロス仕上げです。次が耐火ボード+珪藻土仕上げです。
木ずり+土壁。こまい+土壁。さらに漆喰で仕上げるやりかたがありますが、どうされます?
施主さま:どんな風に違うのですか?
私:下地を耐火ボードにするか、土にするかでまったく違うものになります。珪藻土仕上げといっても耐火ボードの上に2㎜程度塗るだけでしょ。土は木ずりの上に1cm5㎜以上の厚さに塗り、そのうえに漆喰で仕上げますから、保湿力が全然違います。
こまいと土壁は、土の厚みが7cm以上にもなりますから、保湿力の上に耐火性能が加わります。ただ、こちらのおうちの場合は、手刻みですので、土の場合は木ずり+土壁となります。
施主さま:建物を解体するときに耐火ボードが廃棄物として、たくさんでる家にはしたくありません。木ずり土壁でやってください。
こうして手刻みによる木ずり、土壁の家づくりがはじまりました。
建て方の様子(動画)
土壁の上に、漆喰を塗っていきます。(右壁は、まだ木摺りのまま)
その他の完成風景
篠ノ井T様邸
・一般工法(手刻み)
・建坪 65.6坪
・構造材
土台:ヒノキ(木曽ヒノキ)
大黒柱:ヒノキ 竹角(木曽ヒノキ)
梁・桁:信州カラ松
差し鴨居:信州赤松
・内部仕上
大壁、木摺り、土壁・漆喰仕上げ。(耐火ボード不使用。)
・竣工 平成24年8月