伝統構法ブログ

伝統構法って、どんな構法!?在来構法と何が違うの!?  伝統構法の今を伝えるブログ「伝統構法ブログ」

小坂建設株式会社

伝統構法について

日付 題名 分類

土壁の住み心地 #1

伝統構法と耐震性能, 伝統構法について, 室内環境と土壁

先週末から、京都に行ってました。

土壁の公開研究会に参加。

写真は、研究会の会場

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西陣ヒコバエノ家

研究会参加者たち
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人が、感じる暑さ寒さは、気温、湿度、気流の三つの組み合わせで決まります。従って、同じ気温でも湿度が上がると体感温度は上昇し、湿度が下がるとすずしく感じます。よく海外旅行でも暑いところに行ったのに気候が、カラッとしていて、日本の夏より過ごしやすかったといった感想を聞くのはそのためです。

断熱材のない土壁の部屋と、断熱材ありのクロス貼りの部屋の、住み心地の比較が、報告されました。夏場は、室内気温が、クロス貼りの部屋よりも土壁の部屋の方が高く測定される一方で、湿度は、土壁の部屋の方が低く抑えられるため、結果的に土壁の部屋の方が快適に過ごせるという事です。
この実例は、土壁の厚み15mmでの評価ですので、木ずり土壁仕上げの評価と考えてよいでしょう。 続く

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伝統構法のこれからの設計法

伝統構法と耐震性能, 伝統構法について, 実験・理論

僕が、目指している目的のひとつに、〝伝統構法をすべての棟梁が建築可能なものにする〝というものがあります。今の伝統構法の置かれている立場では、どうしても構造計算というハードルを越える必要があり、専門性が高く、そのことが普及の妨げにもなっています。

木造建築を、大工の手に取り戻す。

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そのためには、難しい計算法を習得することよりも先に、1000年以上の長い時間軸を持つ、日本建築に共通する構造の原理をふまえる事です。
根本の原理さえ押さえておけば、計算は確認の意味だけにとどめることができます。
根本の原理とは何か。僕は、日本建築の本質は、『木のしなりをつかったバランスの建築』だと考えます。

以下の動画は、五十分弱の動画ですが、石場建ての設計法の確立に、尽力される、素晴らしい講義です。一般の方には、難しいと思いますが、こうした取り組みを多くの人に知って頂きたく、あえて紹介させて頂きました。

関連ホームページはこちら
 「日本本来の家づくり」「釘や金物に頼らない構法」



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玄宮楽々園

伝統構法について, 文化価値としての建築

文化9年(1812年) 今からおよそ200年前の建物。
もともとは、江戸時代初期、延宝5(1677)年、彦根藩 四代藩主 井伊 直興により建立されたもの。
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大書院、地震の間、雷の間、楽々の間など、工夫を凝らした部屋が残っています。

ちなみ十五代藩主は、桜田門外で暗殺された幕末の大老、井伊直弼。

明治維新後、導入された西洋の建築手法にのっとったものが、大きな震災に合う度に改正を繰り返す、現代の住宅建築の基準法の基礎となっています。幕末の志士たちは、今の時代をなんと見ているのでしょうか。

明治以前には、大きな震災を経てなお、今もりっぱに建ちづづけている建物がたーくさんあり、それらは、僕の大切な教科書でもあります。

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知恵と工夫の設計~伝統建築に学ぶ~ から

土台を敷き、柱頭と柱脚を板状の足固めと、桁固めで組んだ構造。
最初見たとき、このような繊細な方法を、200年も前の大工さんは、やっていたのかと驚きました。

足固めと桁固めで、柱をS字にしならせる。この基本を、このような細い部材で完成させたものは、初めて見ました。差し鴨居も細く、きわめて繊細なバランス感覚で成立させている建物といえます。

タイムマシンがあったらぜひ一度、この棟梁にお会いして、お話をお聞きしてみたいものです。

追記

上記の柱と土台の接合関係を計算してみました。
柱 4.5分角  より IC=13.5×13.5の3乗÷12=2767.92...㎝の4乗
足固め 3寸5分×1尺1寸 より IB=10.5×33.3の3乗÷12=32310.28...㎝の4乗
よって IB=11.67IC  
大丈夫なわけだ。

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実大実験#1

伝統構法と耐震性能, 伝統構法について, 実験・理論

長野県林業総合センターで行われた、実大実験の様子。
寒かったー

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層間変形角が1/50radに至ってもまだ、耐力が計測されています。
国の安全限界の想定値は1/60radですから、この構造体が、いかにすばらしい「しなり性能」を持っているかがよくわかります。

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会場に持ち込まれたペレットストーブ。
小さくて、持ち運びができて、「どこでも薪ストーブ」って感じです。

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こちらは、ダボのせん断耐力実験のようす。
柱の間には、ダボが埋め込まれています。

こうした新しい架構形態を構造力学から解析し、実験で確かめる。
そのことによって、伝統構法への理解が深まり、その度ごとに新しい発見、驚きがあります。

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実験で使われた架構形態をユニット化して、作られた建物の模型です。

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